日本企業の多国籍化を支援したい|弁理士奥野彰彦様

東京大学大学院を卒業し、サントリー株式会社の商品開発研究所、大手特許事務所・法律事務所を経て独立、現在はSK特許業務法人の所長をしておられるという奥野彰彦様に、ご自身の知財・特許業界でのキャリアについて伺いました。

弁理士奥野彰彦様

 

知財・特許業界へ入ったきっかけ

山奥の農村から地元の進学校を経て京都大学へ

もともと僕は大阪府茨木市の山奥の農村出身です。大阪府出身なのに山奥で実家が農業・林業をやっていたというとびっくりして誰にも信じてもらえないのですが、お風呂は薪で沸かした五右衛門風呂というような環境で自然に囲まれて、塾にも予備校にも行かずに伸び伸びと育ちました。

その農村から地元の進学校の茨木高校に進学し、一年の浪人を経て京都大学農学部農芸化学科に進学しました。しかし、入学式の日に京都大学ボート部のイカツイお兄さん達に取り囲まれて強引に車に乗せられて琵琶湖に連れて行かれたのが運の尽きでした。そのまま、京都大学にはほとんど通わずに年間300日以上の合宿をして、朝昼晩とひたすらボートの練習に明け暮れました。

そのため、京都大学の講義には一切出席せず、研究室には通うものの実験の合間にもトレーニングをして、汗だくのジャージで実験の続きをして先生方・同級生から白い目で見られるというようなデタラメな4年間を過ごしたので、卒業時には教授から京大の大学院の受験禁止を言い渡されました・・・。

 

『京大ボート部の先輩の一言』をきっかけに弁理士という仕事に興味を持つ

その京大ボート部の3年生の時に、京大ボート部OBに寄付集めをするために東京に出張した際に、当時の東レ・ダウコーニングシリコーンという会社の知財部長をしておられた先輩にあったのがきっかけで弁理士という仕事を初めて知りました。その先輩に、「君、理系か?理系やったら弁理士っていう仕事があるんやけど、結構オモロイで。カネもぼちぼち儲かるでえ。どや、弁理士目指してみいひんか?」と言われたので、弁理士になって見ようかな?と思ったんですね。

そんな折、京都大学の中にある本屋さんで「弁理士ただいま仕事中」という本を読んだんです。

大阪の有名な弁理士の池内寛幸先生が書かれた本でした。その書籍では、弁理士の仕事と生活について、弁理士試験から特許事務所の開設、特許事務所の拡張という具合に、自伝の形式で書かれていました。その本を読んで、理系が活躍できるのは研究開発だけではなくて、特許という世界もあると気付かされました。ちょうど自分は色覚異常で手先が不器用なので、実験が下手くそで研究者には向かないんじゃないかと悩んでいたころでしたね。

そこで弁理士という仕事について考えた時に、実験が下手くそだけれども、歴史・ビジネス・経営などの理系以外の分野にも興味がある自分にとっての天職のように思えたんです。また、子供の頃から経営戦略・軍事戦略などについても興味があったので、なんだかカッコイイ「知財戦略」っていうキーワードにゾクゾクしたことを覚えています。

そこで、大阪の京大ボート部OBに寄付集めに回っている途中で、池内寛幸先生の経営しておられる特許事務所のオフィスビルを偶然見つけたので、アポ無しで突撃してみたんですね。そうすると、意外なことに池内先生が面接に応じてくださり、1時間くらいに渡って僕のキャリア・パスに関する相談に熱心に乗ってくださったんです。その際に「君の専門は何や?バイオか?バイオはまだ特許出願件数が少ないからなあ・・・。しばらくの間、大学院に行って修士号取ってから、民間企業の研究所に行ってバイオの特許出願件数が増えるのを待ってから特許業界に転職したらええわ。せっかく大学院に進学するんやったら東大の大学院に行っとけ。東大の大学院は簡単に入れるし、学歴に箔が着くし、若い内に日本の政治経済の中心地を見ておくんは役に立つで。」という貴重なアドバイスを頂きました。

 

東京大学の大学院に進学し、サントリーの研究所で研究者としてキャリアを積む

池内先生のアドバイスに基づいて、京都大学卒業後、東京大学大学院に進学して修士号を取り、サントリー株式会社の商品開発研究所に務めました。サントリーでは、ワインの連続発酵プロセスの開発や、ビール・ソフトドリンクのハイブリッド製造プロセスの開発などに取り組み成果を上げました。

 

知財・特許業界でのキャリア

ヒトゲノム解読完了後のバイオ特許出願の激増を見て、特許事務所に転職

サントリーで研究をしていた2000年6月に、アメリカでクリントン大統領とクレイグ・ベンター博士によるヒトゲノム解読完了の歴史的な発表が行われました。そして、ヒトゲノム解読完了を受けて、それまで少なかったバイオ分野の特許出願が激増したんですね。その結果、大阪の多くの特許事務所がバイオ分野の求人を出し始めました。

それを見て、深見特許事務所に新設された化学グループに特許技術者として転職しました。深見特許事務所では、化学・バイオ・半導体分野の権利取得の業務に従事していました。また、深見特許事務所は、弁理士試験の勉強を積極的に応援してくれましたので、所内の受験仲間と一緒に土日は自習室で勉強合宿などをしてもう勉強しました。そのお陰で転職して3年目に弁理士試験に合格しました。

いざ、弁理士試験に合格して自分の人生を考えると、そのまま大阪にいては独立開業のチャンスが少ないような気がしました。そこで、深見先生の許可をもらって退職し、深見特許事務所の向かい側のデザイン事務所に勤務していた現在の妻と結婚した上で東京に引越し、東京のプライムワークス国際特許事務所に転職しました。プライムワークスは若手の弁理士さんが多く、超合理的かつローコストな経営を行っていたので、経営面で非常に学ぶことが多かったです。

プライムワークス在職中に特定侵害訴訟代理試験に合格したので、当時プライムワークスと提携していた大野総合法律事務所に転職しました。でも、法律事務所って常に特許侵害訴訟の仕事があるわけではないので、訴訟の仕事が無いと暇なんですよね。しょうがないので、大野総合法律事務所では、山陰、北陸、九州などを飛び回って自分で勝手に営業活動をして、自分で捕まえたクライアントのために自給自足で特許出願をして売上を立てていました。

その後、そのまま自分のクライアントを引き連れて園田・小林特許事務所に移りました。園田・小林ではバイオグループのリーダーとして、ジェネンテックという世界一のバイオ医薬の企業の日本出願を一手に引き受けた上に、国内クライアント開拓の責任者にもなったので無茶苦茶忙しかったですね。

 

そして、独立へ

その後、園田・小林特許事務所の園田先生の急な業務命令により、独立採算の国内クライアント向けのブランチオフィスを横浜に設立することになり、ドタバタの状態で園田・小林特許事務所の横浜オフィスとして独立開業しました。なので、独立開業したくてしたわけではなく、わけの分からない状況でしょうがなく独立開業したという感じですね。

あざみ野駅前

SKIPの創業当初の思い出深いあざみ野駅のオフィス・・・?

 

半年後には、園田・小林特許事務所との提携関係を解消し、独立開業の翌年には、パートナーの伊藤弁理士もシアトルから帰国して加入しワンマン経営から集団指導体制への移行が始まりました。伊藤弁理士と一緒に、リーマンショック後の日本企業の多国籍企業化のための事業戦略を徹底的に分析した結果、日本企業は、新興国市場を開拓していくために、従来の欧米にくわえて中韓台への特許出願を激増させるだろうと予測しました。

そこで、日本企業にとって必須の新興国対応を支援するために、日本語→英中韓の翻訳を日本国内サイドでワンストップで行うことによる翻訳費用の激減、欧米+中韓台のOA応答をすべて日本サイドで主導権をもってコントロールすることによるOA応答費用の激減を主軸にビジネスモデルを構築しました。

また、伊藤弁理士と一緒に特許業務法人を設立して経営の近代化を進めるとともに、欧米+中韓台とのコ レポンの効率化のために、IT化・仮想化・クラウド化・ペーパーレス化を徹底的に進めてコストダウン&業務効率化を進めました。さらに、マクロのフル活用による定型業務・翻訳業務の自動化を進めて、専門の事務担当者の人数が少なくてもスムーズに業務が回る体制を構築しました。

幸いなことにビジネスモデルがうまくいき、コストダウンにも成功してリーズナブルな料金でクライアントにサービスを提供できるようになったたために、案件が一挙に増大しました。日本企業の内外およびアジア企業の外内を中心に売上も順調に伸び(売上高 1億5,213万円, 当期純利益 1,404万円, 手元現預金 1,530万円, 有利子負債ゼロ、経営陣等からの短期借入金2,419万円)、今では代官山にある40坪程度のワンフロアのオフィスビルで仕事をしています。

SKIPの現在の代官山のオフィス・・・自転車置き場よりもかなり快適です

SKIPの現在の代官山のオフィス・・・自転車置き場よりもかなり快適です

 

ぶっちゃけ特許の仕事ってどうよ?

ぶっちゃけ特許事務所の仕事がオススメできるかどうかというと、回答には困りますね。せっかく研究開発の部門で出世コースに乗っている優秀な人が、研究開発のキャリアを捨ててまで特許事務所に転職するのは正直言ってオススメしません。研究開発のキャリアで行き詰まった人がキャリアチェンジするには最適なキャリアパスだと思いますけれども・・・。その場合でも、特許事務所以外にも企業の知財部も選択肢として考慮して慎重に転職したほうがよいと思います。

特許業界の実情について、私が作った「ブラック事務所によろしく」という漫画がありますので、興味のある方は読んでみてください。かなり業界の実情に近いと思いますよ。

ブラック事務所によろしく

 

外国出願を通じて日本企業の多国籍化を支援したい

■SKIPの経営ミッションは以下のとおりです。

ミッション:日本企業が多国籍企業化するため の知財戦略の実行を支援します。

理由:日本経済を支える中心は、日系の大手製造業です。しかし、日本の人口構造が高齢化して国内マーケットが縮小しつつあります。そして、最後の成長市場であった医療・福祉マーケットも2015年に高齢者人口がピークを打って今後はほぼ横ばいになることが明らかです。

このような状況で日本経済を支える日系製造業が生き残るには、欧米中 韓台+新興国をはじめとする海外マーケットを攻略するしかありません。欧米中韓台+新興国マーケットの攻略においては、それらの国における強力な特許ポートフォリオを低コストで構築することが重要です。

そのため、SKIPとしては、日本経済の生き残りのために、日系製造業の欧米中韓台+新興国における強力な特許ポート フォリオを低コストで構築できるように代理人として支援することをミッションとしています。

 

■ミッション実現のための戦略は以下のとおりです。

戦略1:SKIP内に欧米中韓台+新興国に対応可能 な強力な組織を構築します

戦略2:SKIP内に欧米中韓台+新興国でのスムーズかつ強力な権利化の基礎となるユニバーサル・ドラフティングを国内段階で可能とする強力な国内明細書作成ノウハウをマスターした日本人理系修士・博士による強力な国内チームを育成します

戦略3:ユニバーサル・ドラフティングに基づいた国内明細書を基礎として、欧米中韓台+新興国への明細書に翻訳することのできる、強力な日英・日中・日韓の翻訳チームを所内に構築します

戦略4:所内では対応困難な翻訳業務に対応できる日英・日中・日韓・日独・日仏・日タイ・日ベトナム・日イ ンドネシア・日露・日スペイン・日ポルトガルなどの優秀なフリー翻訳者との直取引契約に基づくエコシステム をSKIPの周囲に構築します

戦略5:日米欧中韓台+新興国の高品質かつ安価な現地代理人との間で、PPHおよび 修正実体審査を積極活用し、翻 訳・OA応答の検討・チェックの2重化を排除した役割分担の明確な契約に基づくコストパフォーマンスの高いネットワークを構築します

戦略6:IT技術を駆使して特許事務の効率を向上します

戦略7:日英・日中・日韓でのコレポンに対応可能な強力なバイリンガル・トリリンガル人材による欧米事務・中韓台事務のチームを構築します

戦略8:ウェブマーケティングのフル活用による宣伝広告コストのゼロ化によってコスト競争力を向上します

戦略9:特許業界最高の報酬水準を実現して、優秀な理系修士・博士、バイリンガル・トリリンガル人材を採用コストゼロで大量採用して戦力化します

戦略10:アメーバ経営による報酬体系の明確化によって、各アメーバが自律的に営業、売上向上、業務改善、人材育成に取り組むようにして、中間マネジメントの自動化を行います

身の程知らずの大それたことではありますが、サントリー時代に叩きこまれた「やってみなはれ精神」でチャレンジしてみようと思っています。

 

奥野彰彦氏略歴

学歴

1992年 大阪府立茨木高等学校卒業

1997年 京都大学 農学部農芸化学科 学士 (物質-細胞統合システム専攻)

1999年 東京大学大学院 農学生命科学研究科 修士 (バイオインフォマティクス専攻)

職歴

1999年4月~2001年3月 サントリー株式会社 商品開発研究所

2001年4月~2003年10月 深見特許事務所

2003年11月~2004年12月 プライムワークス国際特許事務所

2005年1月~2006年3月 大野総合法律事務所

2006年4月~2008年12月 園田・小林特許事務所

2008年10月8日 園田・小林特許事務所横浜オフィスを設立

2009年7月1日 SK特許事務所に名称変更

2009年11月4日 SK特許業務法人を設立

 

 

知財キャリアセンターからのコメント
日本企業のグローバル展開について熱い思いを持つ弁理士の奥野彰彦様にご自身のキャリアについて伺いました。
知財キャリアセンターでは弁理士等、知財関連職種の方のキャリアサポートを行っています。 無料転職サポートへの登録はこちらから。
※求人状況等によってご紹介できない場合がございます。

 


完全無料!専門コンサルタントによる無料サポート

業界未経験でも安心の
手厚いサポート

知財業界における効果的なアピールの仕方のアドバイスや、書類指導、面接対策などのサポートを、特許事務所や企業知財部に精通している専門のコンサルタントから受けられます。費用は一切かかりません。知財業界未経験の方や、転職が初めての方も安心してご利用いただけます。

[無料] 転職コンサルタントに相談する

未経験者からベテランまで
あなたに合わせた求人をご案内

「知財キャリアセンター」には公開されている求人だけではなく、非公開求人や「知財キャリアセンター」にだけ知らされている独自の求人など、特許事務所や企業知財部との強いコネクションを背景とした求人が数多くございます。その中からご希望やご経歴に合わせた求人をご紹介いたします。

[無料]非公開求人紹介に申し込む