特許事務所は新卒を採用しないのか?
特許事務所への転職の一般的なケースのひとつは、理系大学卒業後メーカー等の研究職に付き3,4年を経て弁理士の試験に挑戦しながら特許事務所へ移るというもの。もう一つはすでに知財業界で明細書作成の経験を積んでいる方が他の事務所に移るケースです。それでは特許事務所は弁理士や特許技術者として新卒の採用をしていないのでしょうか?
新卒よりも社会人経験者が好まれる理由
結論から言うと、特許事務所が弁理士や特許技術者として新卒を採用することはないわけではありません。しかし、それほど多いとはいえません。
多くの特許事務所では新卒の方よりも、企業での就業経験のある知財業界未経験者の方を好みます。その理由についてご説明いたします。
基本的なマナーを身につけている
まずは一般の企業が第二新卒を取る理由と同じで、社会人としての基本的なマナーを身につけている点を評価しています。
特許事務所での人材教育はどうしても明細書の書き方など専門的な業務内容に関するものが中心になってしまい、メールの書き方や名刺の交換の仕方など一般的なマナーについての教育は優先度が下がりがちです。同じ知財業界の未経験者を取るのなら、一般的なマナーを身につけている人を優先したいと考える特許事務所が多いことも頷けます。
お客様の立場を想像し尊重できる
特許事務所の組織は一般の企業の組織とは異なっていることが多いです。しかし、特許事務所のお客様は、企業の研究職や知財部の方など、企業という組織で働いている方が中心になります。
上司との調整や、部門としての目標など様々な力学の中で日々の業務を行っている企業のお客様の事情を、一度も企業で働いたことのない新卒の人間が推し量るのはなかなか難しいことです。
弁理士や特許技術者も、お客様の要望を具現化するサービス業の側面がありますから、お客様の事情を察してコミュニケーションを取ることが必要になってきます。この点で企業での就業経験のある未経験者が有利になります。
社会人経験が常に優先されるわけではない
もちろん、弁理士や特許技術者としてのコアは価値ある特許の出願ですから、その部分でポテンシャルを示すことが出来なければ、社会人経験があり、弁理士資格をとっていても未経験者が採用されることはありません。
また、上記の基本的なマナーについては学生の方でも高いレベルで身につけている方もいらっしゃいます。新卒の方でももちろんチャンスは有ります。知財キャリアセンターのお付き合いのある特許事務所さんで、新卒の方を積極的に面接しているところもあります。
何より大事なのは、知財の業界で活躍していきたいという強い動機と、それを実現しうるポテンシャルを感じていただくことだと思います。